引っ越し会社が運べない荷物まとめ。DIY品や組み立て家具、ペットなどは業者が拒否の可能性大
最終更新日 2023年09月14日
引っ越しの荷造りは準備万端、さあ当日に引越し会社に荷物を運んでもらうだけ!となっても、実は当日に運搬を断られてしまうケースがあることをご存知でしょうか? 国土交通省「標準引越運送約款」では、業者が引受拒否ができるものが定められているほか、各社独自の規定を設けているものも。
追加料金を払ったとしても運べないのには理由があるのです。アート引越センター、アップル引越センター、ファミリー引越センター、K・S引越センターの4社に、どのようなものが断られてしまう可能性があるのか、理由もあわせて取材しました。
■目次
- 「標準引越運送約款」に書かれている引越し会社が引取拒否できるものって?
- 1、貴重品は紛失しても自己責任! ダンボールに梱包して「どこ行った?」は“あるある”
- 2、火薬、危険品、不潔物など。バイクにガソリン、ストーブに石油、など“入ったまま”に注意!
- 3、ペットや、ピアノや美術品などの趣味周りのものも運搬NG
- 4、故障などの懸念があるものは必ず申告を。勝手に「申告しなくてもいい」判断はダメ!
- その他、運搬できないものや注意が必要なものは?
- 引越し会社が運べるもの、運べないもの、事前にどうやって調べる?
- 運搬を断られたらどうする?
「標準引越運送約款」に書かれている引越し会社が引取拒否できるものって?
「標準引越運送約款」とは、引越し会社と消費者の間のトラブルを未然に防ぐことを目的に国土交通省が定めているもの。そのなかには、“引受拒否”ができるものの項目があります。
―――
「標準引越運送約款」より
荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。
一 現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品
二 火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの
三 動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
四 申込者が第八条第一項の規定によるその種類及び性質の申告をせず、又は同条第二項の規定による点検の同意を与えないもの
―――
具体的に、どのようなものが該当するのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1、貴重品は紛失しても自己責任! ダンボールに梱包して「どこ行った?」は“あるある”
一 現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品
貴重品(現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑など)のトラブルでよくあるのは、「他のものと一緒に梱包してしまうこと」。自分で持ち運ぶことが大切です。
他のものと一緒に梱包してしまうと、引越し後すぐに必要になっても出てこなくて困るだけでなく、 “紛失・盗難疑惑”などのトラブルに発展してしまうかもしれません……!
「お客さまの貴重品が紛失してしまったときは、引越業者としても警察に届け出ることを勧めています。お客さまの中には、たとえ後日、出てきたとしても、一度言ったこと(自分に非はない等)を引っ込められない方もいます。引越業者は言われたことを根に持ったりしないので、円滑な処理のため、真実を話していただけると助かります。また、こういった事態をなるべく避けるため、事前に貴金属は他のものと一緒に梱包せずにご自分で運んでいただくよう、口頭や文言でもお伝えしています」(アップル引越センター 高江洲さん)
「お客様が貴重品をダンボール等に梱包され、当社に申告がない場合は、お運びした際に万一紛失があっても対応できかねるため、お客様には事前にご自身でお運びいただくように案内しています」(アート引越センター 高島さん)
また、運搬時だけでなく、自宅からの荷物の運び出し作業をするときにも注意が必要。
「荷物の運び出し作業中に、棚の上に置いていた現金が無くなったとお客さまから連絡があったことがありました。実際には、家の裏口などの施錠もしていなかったので、どこで紛失したか分からない状況でした」(K・S引越センター 磯田さん)
せっかくの新生活のための引越しも、貴重品の紛失はテンションが下がってしまうもの。貴重品は常にどこにあるかを把握し、自分で責任をもって管理しましょう。
2、火薬、危険品、不潔物など。バイクにガソリン、ストーブに石油、など“入ったまま”に注意!
二 火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの
火薬類をはじめ、灯油やガスボンベ、オイルヒーターなどの引火のおそれがあるもの、ペットのトイレや生活ごみなどの不潔物、化学薬品などの危険品、他の荷物やトラックの荷台を汚してしまうおそれのあるものなども、引取拒否の対象。
忘れがちなのは、石油ストーブのなかに灯油をそのままにしていたりと、危険物を何かに入ったまま運搬してしまうケース。「こういったものは可燃性があり、こぼれてしまうと他の家財を汚してしまうおそれがあるため、忘れずにあらかじめ中身を空にしていただくよう、事前にご案内するようにしています」とアート引越センターの高島さん。内容物が多い冷蔵庫も要注意です。製氷皿を含めて中身を空にし、前日までにコンセントを抜いておくのが理想的。
また、しょうゆ瓶など中身がこぼれやすいものもNG。
「通常、液体や食品の運搬はご遠慮させていただいています。以前、お客さまが梱包されたしょうゆ瓶がトラックの荷台で割れてしまい、しょうゆでお客さまのお荷物にシミやにおいがついてしまったことが。それだけでなく、トラック内にもにおいが残ってしまい、においが取れるまでそのトラックは使用できなくなってしまうのです。損害賠償請求をすることはありませんが、トラックの床は木製のため液体を吸収しやすく、においを取るためには時間がかかってしまうんです……」(ファミリー引越センター 秋葉さん)
運搬できないからといって、「引越会社のオプションサービスによる不要品引取で依頼したいというお問い合わせもありますが、お断りしています」(アップル引越センター 高江洲さん)とのことなので、こちらも注意が必要。
引越会社ではいろいろなサービスを用意していますが、客としてのマナーや礼儀を守り、気持ちよく引越しをサポートしてもらうようにしましょう。
3、ペットや、ピアノや美術品などの趣味周りのものも運搬NG
三 動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
大事な家族、犬や猫などのペット、観葉植物も引っ越しで運べないものの代表格。動物は移動中の健康リスクなどがあるため、植物も枝葉が損なわれたり、枯れてしまったりする可能性があるため。「植物は補償対象外である旨をご了承いただければお運びすることもできますが、運搬中は長時間、水分や光が無い環境に置かれるため、葉落ちや枯れてしまう恐れがあります」(アート引越センター 高島さん)
美術品や骨董品は、引越会社が別で保険を掛けたり、別の専門業者に依頼・紹介するなど、モノと状況に応じて対応は異なるとのこと。
ピアノなど特殊な管理が必要なものも引取拒否になることが多いですが、「50~60kg程度の電子ピアノ等であればお運びします」(アップル引越センター 高江洲さん)とのことなので、判断に迷ったら問い合わせを。
昔のレコード家具や、プラモデルなどのつくりが繊細なものは、トラックの揺れによって壊れてしまったりする可能性があるので、こちらも気をつけましょう。
4、故障などの懸念があるものは必ず申告を。勝手に「申告しなくてもいい」判断はダメ!
四 申込者が第八条第一項の規定によるその種類及び性質の申告をせず、又は同条第二項の規定による点検の同意を与えないもの
今まで紹介してきたものも含め、引越会社が「ぜひ事前に申告をしてほしい」というものもあります。申告をしなかったり、事前に点検を拒絶したりすることで、トラブルになってしまうことも。
「パソコンやブルーレイディスクのように、一見すると問題がなさそうに見えても、内部異常が起こりうる製品は必ず申請をしていただきたいです」とアート引越センター高島さん(ちなみに、パソコンは必ずデータのバックアップをし、購入時の箱にはパソコン専用の梱包材が使用されているため、そちらに梱包するのがベスト)。
「梱包された新品の家具や家電も申告をしていただきたいです。不具合があっても、それが当社で運搬した際に起きたものか、お店からお客さま宅へ運搬した際に起きたのか、それともメーカーからお店に運搬した際に起きたものなのかが分からなくなり、トラブルのもととなります」(ファミリー引越センター 秋葉さん)
依頼側が申告不要と勝手に判断してしまい、申告が漏れるケースもあるようです。
「お客さまが、高価な美術品やペットなど(ハムスターのような小動物)を他の荷物と一緒にダンボールに入れていたのですが、申告がなかったために中身が分からず、運搬してしまったことがあります。美術品が壊れてしまっていたり、ペットが元気がなくなっていたら大変ですから、後ほど確認をしたら『そんな大したことないのに』と言われてしまって……」(K・S引越センター 磯田さん)
「大丈夫だろう」「大したことない」と思っても、実際には破損や故障、時には生命の危機につながることも! 何かあってからでは遅い、ということを肝に銘じて、勝手に判断してしまわず、細かいことでも懸念点を共有しておきましょう。
その他、運搬できないものや注意が必要なものは?
一見、「標準引越運送約款」に記載がないものでも、注意が必要なものもあります。以下は今回取材した4社の一例です。
なかでも、4社中3社が例に挙げている「IKEA(海外製)家具」「有機ELテレビ」、2社が挙げている「DIY品」「システムベッドや跳ね上げ式(油圧式)ベッド、電動ベッド」は、他の引越し会社に依頼する場合も専門業者に委託する等の特別対応が必要な場合もあるようなので、注意が必要そう。
「IKEA」など海外製の家具には解体組立するとネジが弱くなって原状回復ができなくなったり、解体組立に時間がかかるために運搬拒否されるケースが多い模様。「有機ELテレビ」は破損しやすいこと、DIY品は原状回復が困難なこと、「システムベッドや跳ね上げ式(油圧式)ベッド、電動ベッド」は解体組立に時間がかかることが運搬拒否の可能性が高い主な理由のようです。
解体組立に時間がかかるもの、原状回復が困難なもの、破損の危険性があるもの、運搬方法が困難なもの、と覚えておくとよさそう。
社名 | 運搬できないものや注意が必要なもの | 対応 |
---|---|---|
アート引越センター | 運ぶ際に危険性があると判断されるもの。 例: ・自作物(補償の範囲が定まらないため) | 運搬物の内容によっては有料で対応(当社から専門業者への委託することもある)。 それ以外は、お客様自身に運んでもらうか、お客様自身で専門業者に依頼するように案内 |
アップル引越センター | 壊れる可能性が高い状態のものや、物理的に原状回復できないもの 例: ・水やジャリ等を抜いていない水槽 ・DIY品で、原状回復が困難な家財 ・IKEA家具製品に見られる原状回復が困難な家財 ・システムベッドや跳ね上げ式(油圧式)ベッド、電動ベッド ・有機ELテレビ ・ガラス製品(ディスプレイ用のガラスケース等) | ・水槽… 水やジャリ等を抜いて空っぽにしてあれば運搬可 ・DIY製品・IKEA製品… 自分で事前に分解しておけば運搬可(あるいは破損の可能性を了承の上であれば運搬可)。分解組み立ても依頼の場合は有料で対応 ・システムベッドや跳ね上げ式(油圧式)ベッド、電動ベッド… 有料対応 ・有機ELテレビ… 補償対象として有料運搬、あるいは補償対象外で無料運搬 ・ガラス製品… 家庭にある飾り棚やガラスケースであれば、問題なく運搬可能だが、事前に申告していただく必要がある。また品物によってはお断るすることも |
K・S引越センター | 運搬方法が難しいもの。 例) ・大きな物置や観葉植物(2m超) ・業務用(冷蔵庫など)の重量物 ・魂を抜いていない仏壇(※) ・有機ELテレビ ・油圧式の跳ね上げベッドや介護ベッド ・IKEA家具 | ・大きな物置や観葉植物(2m超)… ユニック作業(重い荷物をクレーンで吊り上げて運搬する作業)が発生する場合は協力企業に依頼。 物置については専門業者への解体組立を依頼している。 観葉植物については人力で吊りロープを使っての吊り作業も物によっては可能。タンス類やソファーなどは吊りロープを使っての吊り作業が可能(ハシゴを架けられるような立地条件であれば) ・有機ELテレビ… 専門業者に依頼するよう推奨、あるいは補償できないと事前に伝えた上で運搬 ・業務用(冷蔵庫など)の重量物… 専門業者に依頼するよう推奨 ・魂を抜いていない仏壇… 仏具屋さんへの依頼を推奨 ・IKEA家具… 暮らしのマーケット等で家具の解体組立を専門にしている人に依頼することを推奨 ・油圧式の跳ね上げベッドや介護ベッド… 専門業者に依頼するよう推奨 |
ファミリー引越センター | 特注の家具や、海外製の家具家電など、運搬を想定して設計されていない、分解組立ができない、持ち手がない、などの理由から運搬が困難なもの 例) ・ニトリ「Nスリープマットレス」 ・DIY家具 ・IKEA家具等の海外製の家具 ・長年使用の大型の物置 ・大型のテレビ(液晶や有機ELなど) ・アンティーク家具 | ・提携会社で運搬できるか確認 ・ものによってはオプションを用意 上記が難しい場合は依頼者自身で運搬を推奨 ※購入した店・メーカーがある場合はあわせて問い合わせすることを推奨 |
※仏壇の引越しをする際には、一般的に移動前には僧侶による読経の「魂抜き」と呼ばれる儀式(法要)、移動後は「魂入れ」の儀式を
引越し会社が運べるもの、運べないもの、事前にどうやって調べる?
とはいえ、上記に記載がないものでも、「これはどうなんだろう?」と判断に困るものも。各社に、事前にどのように情報収集をしたらよいか聞いてみました。
社名 | 運べないものを事前に調べる方法 |
---|---|
アート引越センター | ・WEBのお問合せフォームで質問する 問い合わせ ・見積り時に営業担当者に直接お問い合わせ |
アップル引越センター | ・特殊と認識しているものはすべて事前に電話かメールで問い合わせする ※業者も特定のお荷物に対してはアンテナを張っているため、荷物の内容の確認の際に尋ねることが多い |
K・S引越センター | ・事前にネットで検索 ・業者から確認・説明してくれる会社を選ぶ ※確認しない業者は当日に追加費用を請求されたりする可能性あり。 トラック協会が発行している「引越し安心マーク」取得業者を選ぶのがオススメ。取得業者は、毎年、引越しトラブル等の講習を受講している。 引越事業者優良認定制度(引越安心マークについて) |
ファミリー引越センター | ・荷物リストを聞く際に引越し会社から質問がある、あるいはその際に質問をする |
運搬を断られたらどうする?
運搬を断られたら、主に以下の選択肢がありそうです。
- 追加料金で運搬を依頼する(引越し会社による)
- 引越し会社に提携の専門業者を紹介してもらえるか確認する
- 自分で専門業者に依頼をする
- 自分で運ぶ
(5. 補償対象外であることを承知して運搬してもらう ※リスクやトラブルの元となるのでなるべく避けることを推奨)
どの選択肢を選ぶにせよ、引越し当日に運搬ができないと判明して慌てたり、対応に困ったりしないように、事前に問い合わせたり調べたりして、しっかりと準備を進めるようにしましょう。
●取材協力
・アート引越センター
・アップル引越しセンター
・ファミリー引越センター
・K・S引越センター
引越し対応エリアから探す
現住所(現在の住居)の都道府県をクリックしてください。
SUUMO引越し見積もりでは、各都道府県の住みたい街ランキングを確認できます。
いま住んでいる街や住みたい街の情報をチェックして、引越しに役立てよう!
北海道・東北 | |
---|---|
関東 | |
北陸・甲信越 | |
中部 | |
関西 | |
中国 | |
四国 | |
九州・沖縄 |