引越しの荷づくりは1時間で完了! 必要最低限のモノで暮らすミニマリスト「引越しはモノの適正量を見直すチャンス」佐々木典士さん
公開日 2024年04月05日
(写真撮影/上野優子)
引越しは不要なものを処分したり、必要なものを買い足したりと、暮らしを見直す良い機会。でも引越し作業をしていると、「もっと荷物が少なければいいのに」「どうしてこれを買ったんだろう?」なんて思ったりしますよね。「モノの量」が適正なら引越しも楽になるはず。そこで、10回の引越しを経験してきた「ミニマリスト」の佐々木典士(ふみお)さんに、モノを持つ基準や、少ない荷物での引越し経験を聞きました。

「僕はぐるぐるしている重いパソコンでした」
「ミニマリスト」とは、必要最小限(minimal)のモノだけで暮らす人のこと。佐々木典士さんはそのミニマリストを代表するお一人で、著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』が世界累計80万部のベストセラーと多くの人に読まれているほか、ブログなどでミニマルな暮らしについて発信しています。
今は必要最小限のモノで暮らすことの快適さを実感している佐々木さんですが、「以前の僕は、処理中のぐるぐるしている重いパソコンのようでした」と語ります。部屋には大きな家具が置かれ、数多くの家財道具や雑貨のほか、趣味の読書や写真に関するモノも増える一方。モノをたくさん持っていたけれど、満たされない思いもどんどんうずたかく積まれていました。
「気づいたら気持ちも暮らしもフリーズ状態。何に対しても非活動的で自分のことが好きではありませんでした。そして、パソコンをキビキビ動かすには、要らないモノを減らして身軽にしていくしかないことに気づいたのです」
そんな佐々木さんがミニマリストになったのは10年ほど前の2014年。断捨離ブームに影響を受けつつ、少しずつモノを減らしていたある日、最小限のモノで暮らすミニマルなライフスタイルに出合いました。「モノに縛られないミニマリストの暮らしを知って、何て身軽で自由なんだろうと心が揺さぶられました」
驚くほどモノが少ない空間。使っている家具はキャンプ用のもの。「軽いので、ヨガをするときにすぐに動かせます」(写真撮影/上野優子)

「必要なモノだけに減らすと、気持ちが楽になります」
それ以降、どんなに気に入っているモノでも「これはなくても大丈夫かも」「1回手放してみたらどうなるだろう」と一つ一つ吟味して、持っていたモノの9割以上を手放したそうです。
「一番迷ったモノはテレビです。映画好きでテレビ番組も録画してよく観ていましたから。でも録画が溜まったまま観ていないことがプレッシャーになっていることに気づき、テレビをなくしたらとてもスッキリしました。10年以上かけて集めた蔵書を丸ごと古書店に買い取ってもらったときは、かなり思い切りました。でも積んだままの本も多く、『読まなくては』とどこか心の負担になっていたんですね。本棚ごと手放したら、ものすごい解放感を味わいました」と佐々木さん。さらに、ときめく思い出の品まで手放してみたそうですが、「なくなっても思い出は残ることがわかりました」
「モノを減らせば減らすほど、気持ちが楽になっていくのを実感しました。かつては、持っているモノに自分の価値を投影して、人と比べて落ち込むこともありましたが、今は本当に必要なモノだけに囲まれて、モノに煩わされることがなくなり、時間が増え、集中力も行動力も高まったのを感じます」
スッキリしたキッチンだから、趣味の料理がはかどる(写真撮影/上野優子)
衣類はお気に入りを厳選(写真提供/佐々木典士さん)

「モノが少ないから、引越しの荷造りは1時間でできます」
「モノを一気に減らして身軽になったので、それ以降の引越しが非常に楽になりました」と語る佐々木さん。
佐々木さんの引越し歴は、大学進学のため東京へ転居したのを皮切りに、26年間で10回近く。「下井草で4年暮らした後、社会人になって中目黒で11年、不動前で2年、京都で2年、フィリピンで1年、香川の実家で4年。その後、香川県内で3回の引越しをして、今に至っています」
10回近い引越しのうち、引越し会社に依頼したのは1回、軽自動車で運ぶ「赤帽」への依頼が1回あるのみ。「赤帽さんは、運転手さん1人だけで来るので、荷物を積むのを手伝う必要があるのですが、その分、料金が安かったことを覚えています」。それ以降の引越しは、自分で軽自動車のバンに荷物を詰めて運んでいるそう。自分では扱いづらい大きな家具・家電は「家財宅配便」を利用。「大きいモノの梱包と設置をプロがやってくれるので、とても便利ですね」
佐々木さんほどミニマルではないにしても、持っているモノの量が少なければ、引越し会社に依頼する場合に料金がかさまず、梱包の手間や時間もかからないということがよくわかります。
「費用や手間の軽減という点で、モノが少ないことのメリットはとても大きいですね。さらに、フットワークが軽くなる点も良いですよ。フィリピンに1年間留学したことがありますが、家にモノがたくさんあったら行こうとは思えなかったですね。今の自分なら、引越ししようと思ったら1時間で荷造りができます。思い立ったらすぐに行動に移せるという身軽さはとても魅力があると思います」
最近の引越し荷物の様子。軽自動車の荷室に積める量だけで、楽々引越し(写真提供/佐々木典士さん)
引越しでは、この収納ケース8個と50Lのコンテナ2つをそのまま車に積載。ここに入っていないモノは大きな鞄などで荷造りし、布団はそのまま積み込みます。段ボールは使わないそう(写真提供/佐々木典士さん)

「最低限必要だと思い込んでいたモノがなくても、何とかなることに気づきました」
引越しが楽になったという佐々木さんにとって、「最低限必要なモノ」とはどんなものかを教えてもらいました。
「最近引越したばかりで、今、家にあるものは、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、照明、テーブルと椅子、スマートフォンやパソコンなどのガジェット類、調理器具、食器、ブラインド、タオル、衣類、寝具など、生活に最低限必要なものです。ただ、『最低限必要』と言っても、なくても何とかなっていたこともあります。例えば、フィリピンでは洗濯機を持たず、手洗いしていたこともありますし、机も椅子もなく暮らしていたこともあります。照明も引越してから何日間も取り付けていなかったですね。夜、暗くて不便なのでさすがに設置しましたが」
今はテレビもソファもない佐々木さんの家ですが、これからパートナーと二人暮らしになるので、必要に応じてモノを増やしていく予定だそう。「そのモノがあることで二人暮らしが快適だったり、心豊かになるかどうかという観点で購入の判断をしていこうと思います」
暮らしていくと、趣味のモノや嗜好品などがどんどん増えていくのが一般的ですが、佐々木さんはどうしているのでしょうか。「キャンプや登山が趣味なので、アウトドア用の椅子やテーブル、食器などを持っていますが、引っ越したばかりなので、今はそれを普段使いしています。それから、好きなDIYの道具一式も持っていますよ。映画や海外ドラマを観るのも好きですが、基本的にオンデマンドやサブスクを利用しています」。兼用できるモノを使う、モノではなくデータを利用するという徹底した姿勢が伺えます。
キャンプ用の食器も普段使い(写真撮影/上野優子)
好きなコーヒーの道具もアウトドア用品を中心にそろえました(写真撮影/上野優子)
工具一式。同じメーカーのものだから色合いが統一されてスッキリ見えます(写真提供/佐々木典士さん)
一般的には必要だと考えられているけれど、実際にはなくてもよいと感じるモノについても聞いてみました。「バスマットは体を拭くタオルをそのまま使えば良いので、なくてもいいかな。子どもがいる家庭ならあった方がいいかもしれないですね。また、現在、料理の勉強中なのですが、揚げ物をしようと思い、油切りのバットを買わなくてはと思ったのですが、魚グリルの網で事足りることに気づいて買いませんでした。料理に使うボウルも、アウトドア食器の大きめのものを使っていますし、音楽を聴くためのスピーカーも持っているのですが、PCの音質が良くなっているのでなくてもよいかもと思います」
モノの購入時には「これは必要だ」という常識にとらわれないようにしている佐々木さん。「使おうと思ったけれど、結局いらなかった」「買って後悔した」ということが多い人の場合、一歩立ち止まって、「それがあると暮らしが快適になるのか」「何かで代用できないか」と考えるのが良さそうです。

「家にあるモノは『みんな一軍』が理想です」
引越しにあたって「家にモノが多すぎて荷造りの作業がしんどい」「引越しを機にモノを減らしたいけれど、量が多いから大変」という人は多いでしょう。それは自分が持つモノの適正量がキャパオーバーしていることが考えられます。モノの適正量を考えるポイントについて聞きました。
「モノが多くて家の中が雑多な状態だと、視覚的にノイジーで精神的に落ち着かない原因となるので、引越しの際や普段でも、不要なものは整理・処分した方が良いと思いますね。ただ、モノの適正量は人それぞれの事情や考えで異なり、単純に減らせば快適というわけでもないので、難しいですね。たくさんあって持て余している人もいれば、多くても気にならない人もいます。モノがたくさんあっても、その状態がその人にとって幸せなのであれば、減らす必要はないとも考えます」
「私の場合は、『きちんと使ってあげられるモノだけを持つ』のが自分にとって適正な量の目安だと考えています。家にあるモノは『みんな一軍』で、家で活躍している選手だけいるのが理想です」と佐々木さん。「一軍」から脱落して使わなくなった場合、こだわって選んだモノばかりなので手放すのは辛いと感じつつも、メルカリやジモティーを利用したり、友人に譲ったりしています。「自分よりもこれを必要としている人がいる」と考えれば、お気に入りだったモノを手放す辛さも吹っ切れるそう。
「所有するモノの基準を持ち、適正量を把握すると、『今の自分には、処分したいモノも欲しいモノもない』という理想的な状態がたまに訪れることがあるのですが、とても気持ち良く感じられますよ」
時間をかけて選んだこだわりの包丁とまな板(写真撮影/上野優子)
雰囲気のよい照明は、数多くの購入候補の中からパートナーと2人で選んだもの(写真撮影/上野優子)
モノを減らすコツについては、「私の場合、溜めてしまってそれを一気にやるとなると嫌になってしまうので、少しずつやるようにしています」。よく言われる「財布の中から始めよう」というように、小さなスペースから徐々に整った陣地を広げていく感覚で進めるのがオススメとのこと。
そうして、一度自分の適正量が把握できたり、スッキリ快適な空間の良さを認識したりすれば、不要なモノを溜めない習慣が身についていくので、少しずつでも進めていくのが良いそう。
「ただし、モノが少なければいい、モノをどんどん減らさないと快適に暮らせない、というわけではありません。それがあることによって暮らしが豊かになっているのか、また、支障が生じているか否かを判断することが大切です」と佐々木さん。
「仕事も暮らしも何だかうまくいかない、自分を管理できていないと感じたら、思い切ってモノを減らしてみると良いですよ」と佐々木さん(写真撮影/上野優子)
モノが多くて暮らしが機能不全に陥っているなら、引越しは最大のチャンス。自分のモノを持つ基準やモノの適正量を見つめ直して、スッキリ快適な新生活を送りましょう。
●取材協力
佐々木典士さん
作家、編集者。ミニマリストとしての暮らしをブログや著書で発信。著書に『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』『ぼくたちは習慣で、できている。』など。
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