引っ越しを機に防災対策を! 子どもやお年寄りなど家族のための災害への備えって? 東京消防庁、LIXIL 住宅研究所に聞いてみた
公開日 2023年11月01日
地震や豪雨といった自然災害が多発している昨今。日ごろからの防災が重要になってきていますよね。引っ越しで環境が変わる際には、改めて見直しが必要になります。自分自身のため、家族のためにしておくべきチェックや準備には、どのようなものがあるのでしょうか。LIXIL 住宅研究所 マーケティング部 千明和彦さんと東京消防庁にも取材し、解説します。
■目次
- 引っ越し前後にはまず「ハザードマップ」をチェック!
- 避難経路を把握
- 家族の年齢やニーズに応じた防災グッズを用意しよう
- 地震対策は以下の点に注意しよう
- お年寄りだけで災害に遭うことも想定しよう
- 水害や台風は事前の備えと避難指示をチェック
- まとめ
引っ越し前後にはまず「ハザードマップ」をチェック!
新居を決める前後には、まず引っ越し先の自治体が発行しているハザードマップをチェックしましょう。ハザードマップとは、「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」(国土交通省国土地理院)です。各自治体のホームページでも閲覧できます。現在は国土交通省が各自治体のハザードマップをまとめた「ハザードマップポータルサイト」があり、そこから各地域のハザードマップを見ることができます。
国土交通省ハザードマップポータルサイト
自分が引っ越すエリアの地盤や地形を知っておくとともに、避難所の場所も確認しておきましょう。国土交通省が開設している「ハザードマップポータルサイト」の「重ねるハザードマップ」では、洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示できます。ぜひ一度目を通しておくとよいでしょう。
一般的には海辺や河川沿いであれば、台風による高潮や河川の氾濫、地震による津波などに注意が必要です。地盤が緩い場合は、土砂災害などに注意が必要なことも。まず、お住まいの地域が該当するか確認しておきましょう。基本的には、災害が発生しやすい地域は、避難指示が早めに出されます。迅速に避難できるように、日ごろから備えが必要です。
避難経路を把握
いざ新居に引っ越したら、避難経路を確認してください。
集合住宅の場合は、非常用階段の場所からチェック。集合住宅では、複数人が同時に避難できるように「二方向避難」構造が義務付けられています。二方向避難構造とは、階段やバルコニーなど、避難経路が別方向に2か所もうけられている構造のことを指します。
一戸建ての場合は、近くの避難所や避難経路については、各市町村が用意する「防災情報マップ」などで確認できます。避難所までどのような経路で避難するのか、実際に現地に赴いてチェックするとベター。
家族の年齢やニーズに応じた防災グッズを用意しよう
避難所と経路の確認ができたら、次に家族の人数分の防災グッズと非常食の確認をしましょう。引っ越す前から準備していたものもあるかもしれませんが、消費期限が切れていないかどうかも確認してください。
特に、子どもを連れて避難する場合にはどんな防災グッズが有効なのでしょうか。広く子どもたちの支援活動を展開する国際NGO組織「セーブ・ザ・チルドレン」は、「子どもにやさしい非常持ち出し袋チェックリスト」として以下の内容を公開しているので、参考にしてみるとよいでしょう。
子ども用の歯ブラシなど、口腔ケアグッズのほか、おかしや本、カードゲーム、ぬいぐるみなどの安心できるものが含まれていると、避難時の子どものストレスを軽減できます。上記以外にも、がれきの中でも歩ける安全な靴や、自宅のトイレが使えなくなったり、避難場所の仮設トイレの設置が遅れるなども想定されるので、緊急用の簡易トイレや携帯トイレなども用意しておいた方がよいでしょう。
ちなみに、家族に子どもがいる場合には、年齢に応じて以下の点を確認するとよいでしょう。
まず、家族に赤ちゃんや幼児がいる場合は、大人と同じスピードで移動できない場合もあります。天候が悪いケースも考えると、ベビーカーや車いすで移動することは現実的ではないかもしれません。
そうしたケースも想定して、万が一の場合は、家族の誰がどんな手段で子どもを避難させるのか、あらかじめ家族で話し合っておきましょう。抱っこひもで子どもを抱っこすれば、親の両手が空くので避難時に有効です。
地震対策は以下の点に注意しよう
次に、地震対策についてはどうでしょうか。最近は、ホームセンターや100円均一ショップなどで、数多くの地震対策グッズが販売されています。引っ越し前は対策していたけれど、引っ越しのためにいったん全て取り外してしまうケースも多いでしょう。そんな時に大きな地震がきてしまったら、家族を危険にさらしてしまいかねません。まずは、大きな家具の転倒防止ロープを張ったり、緩衝グッズを挟んだりして簡易的にでも転倒防止対策を実施しましょう。
ほかにも、一家に子どもがいる場合は独自の対策が必要です。LIXIL住宅研究所が2023年7月28日から7月31日にかけて実施した調査では、子ども目線での住まいの地震対策は9割弱が必要性を感じているという結果が出ました。
具体的に、実施されている対策には以下のようなものがあります。
子どもの寝る場所(ベビーベッドなど)に家具などが倒れないようにしている | 46.8% |
地震で落ちて子どもがケガをしそうな物は低い場所にも置かない | 41.2% |
扉付き家具のすべて(背の低いものも含む)に揺れで開かない対策を行っている | 33.7% |
さらに、地震などの時に子どもと一緒に避難するために非常用持ち出し袋に入れているもの(袋と一緒においてあるものも含む)については以下のようなものが挙げられました。
実数 | 比率 | |
---|---|---|
子どものための食べ物(食料、飲料、お菓子、離乳食など) | 179 | 30.9% |
オムツや清浄綿、おしりふきなど衛生用品 | 174 | 30.0% |
子ども用の防災ずきんやヘルメット | 112 | 19.3% |
子どものための授乳用品 | 99 | 17.1% |
子どものおもちゃ | 97 | 16.7% |
子どもの気分転換になる絵本やカードゲームなど | 92 | 15.9% |
避難する時のためのおんぶやだっこできる紐・用具など | 85 | 14.7% |
子どもの好きなぬいぐるみ | 79 | 13.6% |
その他 | 4 | 0.7% |
非常用持ち出し袋などに、子ども用のものは入れていない | 45 | 7.8% |
そもそも非常用持ち出し袋を用意していない | 147 | 25.3% |
わからない | 27 | 4.7% |
「日本は、いつどこでどのレベルの地震が発生するかわからない状況です。そのため、どのような住まいにおいても地震対策は不可欠であると考えています。これまでは、子ども目線での地震対策の必要性や情報が限られていたと思います。例えば、大人であれば腰下の低い場所ですが、子どもの背の高さから見て、地震で落ちてきたり、飛んできたりする物が無いか、確認する必要があります。今回の調査が、子どものいるご家庭に、対策の必要性を理解していただくきっかけになればと思っています」(株式会社 LIXIL 住宅研究所 マーケティング部 千明和彦さん)
お年寄りだけで災害に遭うことも想定しよう
家族の中に、お年寄りがいる場合も独自の備えが必要です。足腰が不自由だったり、持病があったりした場合の注意点はあるのでしょうか。特に、自宅にお年寄りしかいないタイミングで突然発生する可能性がある地震や、それに伴う津波などについては、東京消防庁なども事前の対策を重要視しています。
東京消防庁からは、火災や震災などの災害発生時に配慮や支援が必要な高齢者・障がい者やご家族、その他支援される方々向けに東京消防庁が作成している資料「地震から命を守る『7つの問いかけ』」を紹介していただきました。
7つの問いかけは、以下のとおりです。
1.ゆれから身を守ることができますか?
ゆれを感じたら、できるだけはやく安全な場所へ身を寄せることが必要です。
2.ゆれの後、危険に気づくことができますか?
手袋や履物などをリュックサックに入れてすぐに取り出せる場所に置いておきます。ホイッスルやブザーなど、助けを呼ぶための道具も普段持ち歩く鞄や携帯電話などに取り付けておきます
3.自分で、火を消すことができますか?
コンロやストーブの周りに燃えやすいものを置かないとともに、消火器具を分かりやすい位置に準備し、消火や避難の訓練をしておきます。
4.大切な情報を、知ることができますか?
携帯電話、テレビ、ラジオ、パソコンなど、自分に合った情報収集の手段を準備しておきます。支援や配慮が必要な場合は、ヘルプカードやヘルプマークを用意しておき、助けを求めやすい体制にしておきます。
5.頼れる人と、連絡を取ることができますか?
2つ以上の連絡手段を準備しておき、安否確認の練習をしておきましょう。近所の人とも日ごろからコミュニケーションを取っておきます。
6.命にかかわる大切なものはなんですか?
薬や医療機器、アレルギー対応食品などは持ち出し袋に入れるだけでなく、普段から多めに持ち歩いておきます。
7.安全に避難することができますか?
家具の配置を考え、転倒や落下、移動防止対策を施しておくとともに、避難経路も事前に確認しておきます。近所の人同士で事前に顔見知りになっておき、地域で助け合って避難できる体制を整えておきましょう。
家族が自宅にいる時に、災害が発生するとは限りません。上記の7つの対策を普段から心掛け、お年寄り本人と一緒に練習をしておくことが大切になりそうです。
「被害を軽減するためには、地域と協力して高齢者・障がい者の地震に対する備えを進めることが重要です。高齢者・障がい者を対象に、消防職員がお宅で火災、地震及び日常生活事故の危険性をチェックする『住まいの防火防災診断』を実施しています。ご希望の方は最寄りの消防署にお気軽にご相談ください」(東京消防庁)
水害や台風は事前の備えと避難指示をチェック
地震とは異なり、大雨や台風などによる水害は事前に予報が出ていることがほとんどです。繰り返しになりますが、ご自身の住まいのエリアのハザードマップを確認した上で、市町村が発令する警報に注意しましょう。子どもやお年寄りがいるご家庭は、早めに避難を心掛けるようにして下さい。
まとめ
新しい住まいに引っ越すと、災害対策なども一から必要になるかもしれません。しかしこれを機に、非常用持ち出し袋の再チェックを行い、使用期限や消費期限などが切れているものは入れ替えるようにしましょう。子どもやお年寄りがいるご家庭では、事前に入念な準備をした上で、家族や地域の人々が一丸となって助け合うことができる体制を整えておきたいですね。
●取材協力
株式会社 LIXIL 住宅研究所
東京消防庁
写真: PIXTA
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