老後に向けての住み替え。どんな家に住む? 荷物の整理はどうする?
子供たちも独立し、家には自分やパートナーだけが住むことに。子どもたちとの暮らしを考えて選んだ広めのマイホームでは使い勝手も悪くなり、現在の生活に合った手ごろな家に引越したいと考える50代以上の方も増えています。そうした場合、どのような家が選択肢として浮かんでくるのでしょうか? 将来訪れるかもしれない介護のことなど、気になることはたくさん! 高齢者施設などの紹介を行っている「一般社団法人 高齢者住まいアドバイザー協会」代表の満田将太さんに、高齢者をとりまく住宅選びと、引越しの現状を聞きました。

60代を超えると、賃貸を借りづらいことも
まず、現在の家から住み替える際、賃貸物件に入ることを考えているなら「かなり厳しいのが現実」なのだとか。
「60代を超えると、通常の賃貸物件は借りるのが難しくなってきます。高齢の方で、特にお一人で入居される方は、部屋で一人でいるときに亡くなってしまう『孤独死』のリスクがつきまといます。また、決まった収入が年金しかないのであれば、貧困状態に陥り、家賃の滞納が起こるおそれも。もちろんこれらは単なる想像にしか過ぎませんが、貸主としてはリスクのできるだけ少ない人に貸したいというのが本音。子どもが近くに住んでいる、頻繁に訪れて安否を確認してくれる、などのプラス要素があれば、交渉の余地はあるかもしれません」(満田さん・以下同)
シニア層の住宅事情は、思ったより厳しいようです。持ち家のある人はそのまま住み続けてもよいかもしれませんが、現在賃貸物件に住んでいるという人は、現在の家が将来的にも長く住めそうかどうかを検討し、早めに手を打ったほうがよいかもしれません。例えば、現在住んでいる家が坂の上にあったり、階段が急だったりということがある場合は、高齢になるほど移動がしにくくなり、自宅にこもりがちになってしまうことも。もしも不安があるなら、住み替えを検討してみてもよいかもしれません。

老人ホーム、考えるのは本当に「まだ早い」?
高齢者が住む場所といえば、介護が必要になった場合などの「特別養護老人ホーム」や、認知症の患者が過ごす「グループホーム」なども思い浮かびますが、「自分にはまだまだ早い!」と感じている人も多いはず。まだ仕事を続けていたり、身体も比較的自由に動くうちは、介護が必要になったときの想像はつきにくいですよね。
「現在の50~60代の方は本当にお若いですし、みなさんとてもお元気です。実際に、介護が必要になって施設に入られる方も、実は80代以上の方が多く、70代までは元気だったり、ヘルパーによる介助やデイサービスなどを利用しながら自宅で過ごされる方が多いんですよ」
現在55歳だとしても、あと30年くらいは自宅で過ごせる可能性が高いということであれば、引越すメリットはないようにも思えますが……?
「ところが、現状は『自分は元気だから』と、そのまま何も考えずに長い年月を過ごしてしまわれる方がとても多いのです。そうして、ある日突然脳卒中で倒れてしまったり、病気などで入院したものの、自宅では過ごせないくらいの要介護度になってしまう方が多く、施設への入所を余儀なくされてしまうのです。荷物の整理や、大切に持っておきたい思い出の品なども、整理できないまま施設へ……。とてももったいないですよね」
いずれ自分にも降りかかる「どこで老後を過ごすか」という問題。これを長期間考えずにいると、そのまま施設へ入所した場合には、家に残された荷物の整理や、遺品の処分などで、子どもたちに負担がかかってしまうこともありえます。「病気になってやむをえず介護施設に入るよりも、早めに準備をして、自分で選んだところに住み、日々を充実させたい!」と思う人も少なくないはず。それでは、元気なうちから入れるホームなどはあるのでしょうか?

「施設型」よりも「住宅型」を選択しよう
介護を受けながら、老後を過ごす場所の代表ともいえる「特別養護老人ホーム」などは、24時間体制での介護が必要な人(要介護度3以上)から優先的に入所することになります。日常生活において、サポートのあまり必要でない人は入所対象として認められません。また、有料老人ホームなどの個室であっても部屋の面積はどうしても狭いため(10~25㎡程度)、これまで通常の家に住んできた、自立したシニアが過ごす施設としては考えにくいですね。
そうした、介護がまだ必要ない「中間」の時期を過ごす場所として注目されているのが「住宅」のスタイルをとるシニア向け物件。バリアフリーや常駐管理人による見守りなど、高齢者の暮らしに配慮したシニア向けの分譲マンションや、サービス付き高齢者向け住宅などがその例といえます。
サービス付き高齢者向け住宅(「サ高住」ともいう)とは、バリアフリー設計やコンシェルジュによる見守りなど高齢者が生活するのに適した環境を整えた住宅のこと。基本的には住宅なので、手厚い介護は必要なく、ある程度自立して行動できる人に向いているといえます。
「住宅型は、まだお元気な高齢者の方にも人気です。自分の時間や趣味を楽しみつつ、通常の住宅では受けられないサービスがあり、安心して住むことができます。ただし、これらの物件は周辺の賃貸物件と比べるとやはり高め。通常の家賃に加えてサービス料や、希望した場合は食事代も必要になりますので、必然的に月々の費用は上がります」
サ高住などへの入居を希望するのであれば、貯蓄をしっかりとしておくか、家を処分するという選択も必要になりそうですね。

両親の住み替え。子どもにできる親へのフォローとは?
自立して家を出たものの、子どもにとっては大切な親。老後の住居やお金のこと、介護のことなど、気になることはたくさんありますよね。でも、そんな話題を持ち出すと「まだそんな年じゃない!」と叱られたり……。
「やはり、子どもとしては親の介護のことは心配ですよね。私のところにも、『親にはまだ相談していないけれど、情報を集めたい』と、多くの方が訪れています。老後の家について、事前の情報収集はとても重要。予算(貯蓄や年金、介護保険)がどれくらいあり、月にいくらくらいのところになら住めるか。これを基準に、施設や住宅を探すのが基本です。本当であれば、入居する本人の思いも大切にしたいですね。ですから、家族できちんと話し合う時間をつくって、どんなところで過ごしたいか、どんなライフスタイルで暮らしたいかをしっかり聞き取っておくことが大切です」
また、高齢者の引越しはとにかく荷物が多いもの。これらの整理も子どもたちのフォローがあれば進めやすいとのこと。
「例えば2階建ての家に住んでいる人のなかには、『階段を上るのがつらく、もうずっと1階で生活している』という方も。荷物を処分するのであれば、リサイクル業者などに依頼してしまってもよいですが、大切な思い出の品がまざっていることも。時間のあるときに、家族で家の中の荷物をあらためるなどして、いざというときには何を持って行くのかなどを共有しておくのもいいですね」
年齢を重ねると、どうしても身体の無理はききにくくなってきます。そうした場合に、子どもが手を貸したり、フォローできる面はたくさん。また、精神的にも大きな支えになれるはず。物件探しの際にも同行して周辺環境や使い勝手を一緒にチェックしたり、そこにずっと住めるかどうかを考えたりしながら、家族で住み替えに協力しあいながら進めていきたいですね。
取材協力
一般社団法人 高齢者住まいアドバイザー協会 代表 満田将太
公認会計士・税理士として企業の会計監査に携わってきたが、祖父母とのかかわりをきっかけに福祉業界へ。現在は、高齢者向けの住宅や施設を紹介、コーディネートする「株式会社えんカウント」や、高齢者の住まいに特化した住まいアドバイザーを養成する「高齢者住まいアドバイザー協会」の代表を務め、セミナーなども開催している。
掲載:2017年7月7日
写真:PIXTA
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