年賀状を送るとき、一緒に引越しを知らせるのってOK?
引越しをし、家を移転したことを知らせる「移転通知」。引越しのお知らせや新居の住所はメールを送って済ませるということも増えてきていますが、礼を尽くしたい相手にはやはりハガキ! という人も少なくないはず。そんなとき、年賀状の季節が近かったら……? 「やっぱり失礼?」「ほかの季節の挨拶はどうなの?」など、気になるポイントについて、手紙にまつわるマナーに詳しい中川越さんに教えていただきました!

そもそも引越しのご挨拶とは?
引越しの挨拶を郵便でする場合、ハガキに「引越しました」という内容とあわせて新居の住所や現在の連絡先を知らせるのが最もシンプルなパターンです。仕事でのお付き合いがある人などは、そのままコピー&ペーストできるメールでの通知も喜ばれますが、親しい友人や特にお世話になっている方へのお知らせは、郵便で送ったほうが気持ちが伝わり、印象もグッとよくなるはず。
・どのような構成にする?
手紙の出だしといえば「拝啓」ですが、ほかにも「謹啓」「前略」など、思い浮かぶ手紙の冒頭の句はいろいろ。違いや正しい使い方が分からず、調べれば調べるほど何がいいのか迷ってしまうことも多いのでは? 中川さんによれば、「こうした手紙の形式はあくまでも形式。強くこだわる必要はありませんよ」とのこと。
とはいえ、きちんとしたマナーをもって挨拶状を送りたいのであれば「拝啓」から始め、季節の挨拶を入れるのが一般的な流れといえそうです。
「季節の挨拶というのは、よくある『春暖の候』といったようなものもあれば、よりやわらかな表現で『新緑のまぶしい季節』や『まだまだ残暑の厳しい折』などがあります。手紙の文例集などにもたくさんの時候の挨拶の例がありますが、それらを参考にしながら、自分自身が最近ふと感じた季節のうつろいなどを織り交ぜると、より“自分らしさ”のある文に。読む人にも楽しんでもらえますよ。また、自分の近況を添えるのもいいですね。新居の周りはどのような場所か、家族や飼っているペットのことなど、自分の暮らしぶりが伝わるような文章を織り込めば、受け取った人も『あの人は今こんな風に暮らしているのかな』と想像がふくらみますね」
例えば、以下のような文章が、マナーを押さえて丁寧に書かれた挨拶状の文例です。
“拝啓 深緑が目にしみる季節となり、皆様ますますご活躍のことでしょう。
さて、このたび長く住みなれた貴地を離れ、下記の住所に移り住むことになりましたので、お知らせいたします。貴地在住中は、なにかとお世話になり、ありがとうございました。今後も末永いご交誼をたまわり
ますよう、お願いいたします。
なお当地においでの際は、ぜひお立ち寄りください。家族でお待ち申し上げております。とりあえず、転居のお知らせまで。 敬具(住所と名前、連絡先などを記載する)”
恩師、上司などの目上の方に挨拶状を送る場合は、きちんとしたマナーを押さえて書くのがよさそうですね。反対に、友人や親しい知人などであれば、多少くだけた文面になっても、自分らしさの伝わる文章で書くことで、より思いのこもった挨拶状になるといえそうです。
・大切なのはあくまでも「住所を知らせること」
移転通知は、引越したことを知らせるための手紙。いつから、どこに住んでいるのかをしっかりと伝える必要があります。新居の住所や連絡先を、正確に記して送りましょう。間違いがあっては元も子もないので、一枚ずつ手書きした場合は、送る前に改めて確認を。
・文字は見やすく、整理する
手紙の目的は相手に情報を伝えること。読みやすい文字を心がけ、丁寧に書きましょう。字の大きさや行数などにルールはありませんが、普段の自分の字と大きく変える必要はなし。手書きの文字にはとても個性が出るので、それを活かしてもよさそうですね。ただし、読みにくくなってしまうので雑な字は避けましょう。
・まとめて印刷してもOK?
手紙は相手を敬い、思いをこめて書くものなので、印刷はその手間を省くためのツールであり、形式にこだわるとすればやはりおすすめなのは手書きとのこと。とはいえ、お付き合いが多く、たくさんの人に挨拶状を送る必要がある場合には、印刷したものを送るのもOK。
「印刷したものの空きスペースにちょっとしたメッセージを添える方も多いですが、これも元々は『追伸』といって、書き忘れた内容を付け足すためのもの。親しい間柄の人以外には、送らないようにするのが正しいマナーです」
ちなみに、住所や名前、デザインなどを印刷し、メッセージをそれぞれに宛てて書くのは許容範囲。特に住所などは間違えることのないよう、印刷してしまうのがおすすめです。

年賀状で引越しを知らせるのは失礼?
年末に引越しをした場合など、荷ほどきや引越し関連の手続きを進めているうちに年賀状を出す時期が迫ってきます。こうした場合、年賀状と移転通知を兼ねるのは失礼にあたるのでしょうか?
「本来、手紙(ハガキ)は1通につき1つの内容だけを伝えるのがルール。例えば、お見舞いのハガキの中で『ところで、お金を貸してもらえませんか?』などというような内容が続いたら、『このためにお見舞いのハガキをよこしたのでは?』と相手の印象は悪くなってしまいます。ですから、1通につき1つの内容とされているわけです。ですが、例えば新年のご挨拶も引越しも、基本的には新たな未来の訪れを予感させる明るいもの。ですから、年賀状と移転通知は兼ねてもマナー違反にはなりません」
文章はまず新年の挨拶からはじめ、締めくくりの部分で引越したことを知らせるのが自然。「お近くにいらした際は、ぜひお立ち寄りください」などのようなひと言も添えてあるとなおいいそうです。
ちなみに、年賀状だけでなく暑中見舞いなどでも、併せて引越しの挨拶をするのはOK。引越しの時期がこれらの時期と重なりそうな場合は、挨拶を兼ねてハガキなどを送ってもよいでしょう。

マナーは相手への敬意をあらわすこと
挨拶状など、手紙の書き方にはたくさんのルールがあります。社会人であれば、しっかりとした常識のある手紙を書いて送りたいものですが、親しい間柄では、あまりに格式ばった手紙はお互いに距離を感じさせ、かえって失礼になってしまう場合も。
「例えば、日本語を使いこなすプロフェッショナルともいえる明治~昭和時代の文豪たちも、書簡(手紙)のやりとりを見ていると、正しい形式を守って書かれている手紙はほとんどありません。ですが、そうしたたくさんの手紙からは、『相手のことを思い、伝えたいことがあって書かれたものである』ということがとてもよく伝わってくるんですよ。
大切なのは、『相手への敬意をもって書く』ということ。相手がどのような状況でこの手紙を読むか、現在の自分のようすをどのように文章で伝えるか……。相手に何を伝えたいのかを考えながら、素直な思いで書かれた手紙は、何よりも相手の心に響くもの。頭の中に相手の顔を思い浮かべながら、一枚一枚心をこめて書いてくださいね」
近ごろは、手軽に済ませられて便利なメールでのやりとりも増えていますが、だからこそ、手書きで送られた手紙やハガキはうれしいもの。引越しをした際、もしも年賀状の季節が近いなら、引越しを知らせる手紙をかねて、友人やお世話になっている人へ年賀状を送ってみては?
取材協力
中川 越
手紙にまつわるマナーや手紙の書き方などを中心に、多くの書籍や新聞記事、テレビ番組などで監修を担当。
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