生活保護受給者も引っ越しできる? 費用が支給される条件や進め方を解説
公開日 2024年08月09日
生活保護を受けている方も、必要と認められれば引越しが可能です。一定の条件を満たせば、引越し費用や転居にかかる費用を支給してもらえる可能性もあります。
この記事では、生活保護受給者の引越しが認められる条件や支給額、引越しの流れについて解説します。
生活保護を受けていても引越しできる?
諸事情により引越しが必要になれば、生活保護を受けている方も引っ越すことができます。しかし、引越し先や引越しの理由によってはケースワーカーに認めてもらえない場合があります。
ケースワーカーの許可が必要
生活保護受給者が引越しを希望する場合、まず担当のケースワーカーに相談し、許可を得る必要があります。ケースワーカーは引越しの理由や必要性を確認し、生活保護制度の観点から適切かどうかを判断します。
「健康で文化的な最低限度の生活」を逸脱しないことが大切
生活保護制度は、憲法第25条に基づき、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものです。ケースワーカーは、生活保護受給者から引越しの相談を受けると、この条項に基づいて要否を判断します。
生活保護受給者に引越し費用が支給される条件は?
ケースワーカーに引越しを許可してもらったうえで条件を満たせば、引越し費用を支給してもらうこともできます。支給条件は、以下のとおりです。いずれかを満たせば、引越し費用が支給されます。
- 医療機関の指導に基づく入院で、退院後の住居がない場合
- 現在の住宅の家賃より低額な家賃の住宅に引っ越す場合
- 法律により強制的に立ち退きを求められ、引っ越さなければならない場合
- 退職に伴い社宅から転居する場合
- 法理や管理者の指示によって社会福祉施設などから退所する際の住宅がない場合
- 一時的な宿泊施設などから一般的な住宅に転居して生活を始める場合
- 現在の住宅の家主や管理者に不当な行為が見られることを理由に転居を要する場合
- 現在の住宅から就業先に通勤することが非常に困難で、就業先の近隣に転居することで世帯収入の増加や就労者の健康維持などに役立つ場合
- 火災などによって現在の住宅が消滅して住めなくなった場合
- 老朽化や破損により現在の住宅が住めない状態と認められた場合
- 現在の住宅が著しく狭い、または劣悪で明らかに住める状態ではないと認められた場合
- 現在の住宅が居住者の病状や年齢上、著しく環境条件が悪く、居住に適さないと判断された場合
- 親戚や知人宅に一時的に住んでいた人が転居する場合
- 家主に正当な理由で立ち退きを求められたり、契約の更新を拒絶されたりしてやむを得ず転居する場合
- 離婚(事実婚の解消を含む)により新たな住居を必要とする場合
- 高齢者や身体障害者などが日常的な介護を受けるため扶養義務者の住宅の近隣に転居する場合、あるいは扶養義務者が要介護者の住宅の近隣に転居する場合
- グループホームや有料老人ホームなどへの入居がやむを得ないと判断される場合
- 犯罪被害や家族からの暴力があり、安全のために転居する必要が場合
引用:各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局保護課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」
生活保護受給者に支給される引越し費用は?
上記の要件を満たした生活保護受給者に支給されるのは「引越し費用」と「住宅扶助の転居費用」です。住宅扶助には他にも細かな規定があるため注意が必要です。
引越し費用は基本的に全額支給
引越し業者に支払う費用が支給されるかは、ケースワーカー次第です。「最低限」を上回る場合はケースワーカーから許可が下りない可能性があるためご注意ください。たとえば、荷物の梱包から荷ほどきまですべて引越し業者に一任できるプランを利用したり、相場と比べて高額だったりする場合は支給されないおそれがあります。
転居費用には上限がある
住宅扶助の基準額は、1級地・2級地(※)が13,000円以内、3級地(※)が8,000円以内です。家賃などがこの金額を超える場合は、都道府県や市区町村ごとに定められた金額が上限となります。なお、複数人世帯の場合は限度額の1.3倍、7人以上の世帯の場合はさらに1.2倍が上限額です。住宅扶助による転居費用の支給額は、上記の上限額の3倍までとなります。
※エリアの等級については厚生労働省のサイトをご確認ください。
退去費用は支給されない
転居費用として支給されるのは、敷金や礼金、火災保険料など新居の契約にかかる費用です。経年劣化や生活上、必要な範囲を超える傷や汚れが見られる場合は、家主から原状回復費を請求される可能性がありますが、これまで住んでいた家の退去費用は転居費用として支給されないためご注意ください。
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自治体によって支給される項目・金額は異なる
生活保護法は、保護する人の世帯構成や年齢などとともに「生活する地域」に応じた最低限の生活を保障するものです。エリアによって地価や賃料相場、物価は異なることから、基準額とそれに伴う転居費用の上限に加え、認められる引越し費用も変わってくるものと考えられます。また、住宅扶助の転居費用として認められる項目についても差異がある可能性もあるため、ケースワーカーに相談しながら引越しを進めることが大切です。
自治体によって支給される項目・金額は異なる
生活保護受給者の引っ越しは、ケースワーカーと相談しながら進める必要があります。相談なしに勝手に引っ越し先や引っ越し業者を決めてしまうと、引っ越し費用や転居費用が支給されないおそれがあります。
1.ケースワーカーに引越しの相談をする
引越しを検討し始めたら、まずは担当のケースワーカーに相談しましょう。この段階で、以下の点を明確に伝えることが大切です。
- 引越しの理由と必要性
- 希望する引越し先の地域や物件の条件
- 引越しの時期
ケースワーカーは、引越しの条件が「健康で文化的な最低限度の生活」の範囲内であるかを判断したうえで引越しの許可を出します。
2.引越し費用の見積もりを取る
引越しの許可が得られたら、次は引越し費用の見積もりを取ります。引越しにかかる費用は事前にケースワーカーに報告する必要があるため、自身の判断で引越し業者や物件を決めないようにしましょう。
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3.引越しの見積書をケースワーカーに提出する
数の見積もりを取ったら、見積書をケースワーカーに提出します。このとき、引っ越し先として検討している物件の所在や家賃、敷金・礼金などがわかる書類も一緒に提出します。ケースワーカーの許可を得たら、引越し業者や物件の契約手続きをして引っ越します。
4.引越し先で生活保護を申請する
都道府県をまたいで引っ越す場合は、改めて生活保護を申請しなければなりません。元の住所の都道府県で生活保護を廃止し、新居の都道府県で生活保護を申請します。転居により支給額が変わる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
引越し費用を抑えるポイント
先述のとおり、引越し費用を支給してもらうには過度なサービスを受けず、相場と比べて安価であることを伝える必要があります。次のような方法で、できる限り引越し費用を抑えましょう。
複数社で相見積もりする
引越し費用の「相場」は、時期や曜日、時間帯、荷物の量などによって大きく異なります。ケースワーカーに相場から逸脱した費用ではないと客観的に伝えるには、一括見積もりサービスを利用するのが便利です。複数社の見積もりが一括で取れるため、費用はもちろんのこと、自分にあった業者やプラン比較検討できます。
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繁忙期を避ける
引越し費用はさまざまな条件で変わってきますが、最も影響を受けるのは「時期」です。2月~4月はやはり転居する方が多いため、引越し費用は割高になります。たとえば、15㎞未満、2人家族の通常期と繁忙期の引越し費用の相場は、次のように1万円以上変わってきます。
午前 | 午後 | 夕方 | |
---|---|---|---|
通常期(5月~1月) | 83,163円 | 61,856円 | 64,463円 |
繁忙期(2月~4月) | 97,493円 | 75,138円 | 76,831円 |
引越し時期×引越し時間帯の引越し相場(SUUMO引越し見積もり)
とくに、ファミリー世帯は繁忙期の割増額が大きくなりがちです。繁忙期を避け、5月~1月の通常期に引っ越すことで、大幅に費用を抑えられるでしょう。
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荷物を減らす
引越し費用は、荷物の量によっても変動します。たとえば、同じ単身者であっても、荷物の量によって引越し費用の平均額は、次のように大きく異なります。
単身(荷物小) | 単身(荷物大) | |
---|---|---|
平均(通常期) | 46,315円 | 60,091円 |
引越し費用・料金の相場(SUUMO引越し見積もり)
特に、大きな家具・家電のうち不要なものは引越し前に処分し、必要なものは引越し先でそろえるようにするだけで、荷物の量は大幅に変わります。リサイクルショップの出張買取などを利用すれば、手間や費用をかけずに処分することもできるかもしれません。
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まとめ
生活保護を受けている方も、適切な理由があって「健康で文化的な最低限度の生活」を逸脱しない範囲であれば引越しが可能です。ただし、引越しの要否とともに、引越し業者や物件の選定にはケースワーカーの承認が必要です。条件を満たせば、引越し費用や転居にかかる費用を支給してもらえるため、ケースワーカーと相談しながら引越しを進めていきましょう。
画像/PIXTA
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